ストーリー重視の時代が到来
前回の記事の終盤にTo Heart及びKanonの登場でストーリーの中でも泣きゲーと言うジャンルが徐々に登場し始めました。
2000年は
前回の記事でも少し触れましたが、KeyからKanonの続編に当たるAIRが発売されました。
若い方だとAIRをアニメで知って原作がエロゲと知らない人もいましたよね。
それぐらい大衆に広まった作品になりました。
To Heartをモデルとした所謂、純愛、青春、学園ものなどといったストーリー性のある萌え系の作品がこの後どんどん登場してきます。
そして、2004年1月に今や誰もが知っているであろう「Fate/stay night」が発売されます。
本作品は今となっては完全にコンシューマー(スマホとか)に移行してしまうぐらい、当時としては完成度の高い作品でした。
(テキスト量もかなり多かったですよねぇ)
しかし、この大ヒットがきっかけで「うちもストーリー重視のゲームを!」という流れが生まれ、多くのブランドが追随する形になりました。
後にそれが自身を苦しめるきっかけになることも知る由もなく・・・
そして、2004年8月に下級生2が発売されます。
このゲームでは後の歴史に残るある大きな事件が起こりました。
本作品のヒロインが実はDQNの彼氏を付き合っていて処女では無かったのですが、これに怒りを感じたあるユーザーがディスクをたたき割って「脳髄及び 処女膜が破損」した「「柴門たまき」の誤作動により、当方のプレイ環境が整わない」と言って返品するという珍事事件が発生しました。
「ヒロインの処女膜に深刻な初期不良事件」で検索すると多くの記事が今でも出て来るほど、当時のエロゲ界で大きな波紋を広げた事件になります。
(これがきっかけで処女厨という言葉が広く使われるようになった気がします)
ストーリー性にシフトした流れからヒロインは清純で無ければならないという、新たな価値観を持つユーザーが増えてきたことを意味しています。
90年代を駆け抜けてきた各メーカーはゲームの方向性を改めて考え直さなければ、生きていけない事実を突きつけられたわけです。
徐々に声優に注目が集まる
先行して活躍していたのは、歌織さん、長崎みなみさん、北都南さんは引き続き活躍されておりましたが、この時期からは一色ヒカル(正確には97年頃デビューですが)、飯田空さん、榎津まおさん、大波小波さん、大花どんさん、海原エレナさん、金田まひるさん、かわしまりのさん、草柳順子さん、榊原ゆいさん、みるさん等、懐かしさ故に涙が出る人も居るのでは無いでしょうか。
(今でもご活躍されている人も見られますね。)
これまでアダルトゲームの声優が顔出しすることは余り無かったですが(せいぜいインタビュー記事ぐらい)、徐々に顔出しする声優さんが誕生してきた時期になります。
ただ、全盛期から衰退期に掛けては声優の出演が一部に集中していたようにも思いました。
一色ヒカルさん、北都南さんは2000年代適当にアダルトゲームを5本取れば、必ずどちらかの名前を目にすると言われるほど、物凄い出演数を誇っておりました。
後にアダルトゲーム声優界の双璧を成す重鎮と呼ばれるようになりましたね。
不正利用者の横行と不況による翳り
黎明期時代から不正利用は多くあったのですが、全盛期ではそれが急上昇した時期かと思います。
元々アングラの世界ではWinMXを利用した多くの割れ(=違法コピー)が存在していたのですが、当時は「交換」が基本原則であったので初心者にはやや敷居が高いものでした。
しかし2002年にWinnyが登場し、比較的容易にかつ匿名性が高い状態で違法ソフトをダウンロードできるようになりました。
勿論、作者は違法コピーを助長するのを目的としたわけでは無いのですが、メディアがこぞってこのソフトを使って違法コピーをするやり方を雑誌で紹介し、タダで手に入るとまで煽ったことにより、作者が逮捕される事態となりました。
(この逮捕が日本のP2P技術の発展を遅らせたと筆者は思ってます)
またこの当時は不況の煽りをモロに食らっていた時期かと思います。
就職氷河期とも言われ、大学の学部によっては半数以上が就職できない事態に陥っていました。
違法コピーと相まって購入層の減少が徐々に見え始めてきました。
下記のグラフを見ての通り、2001年をピークに2003年に落ち込み始めています。
2004年にFateの発売で盛り返しておりますが、再び2005年に下がり始めています。
アダルトゲームバブルが弾けた瞬間でした。
アダルトゲーム業界で事件が多発した
ブームになって人や作品が集まると当然事件も多発するようになります。
様々な不祥事、お家騒動的なものも多くありました。
また、売上をあげるために急ピッチで開発を進め、インターネット常時接続の時代なので何かあればパッチを当てれば良いという認識で、未完成のまま出すゲームも少なくありませんでした。
宇宙麻雀事件
2000年12月にすたじおみりすより発売された「いただきじゃんがりあん」はとにかくバグが物凄かったゲームになります。
酷いバグだと、役が無い場合にロンすると手配が増えたり、相手が役無しでも上がったり、自分も役無しでも上がれたり、まぁ悲惨なバグ祭りでした。
再三パッチが出るも中々解決されず、13度にわたって配布されたため、特典代わりにパッチを集める「パッチコレクター」が出現したり、続編ではこのバグを正式ルールに採用するわで中々破天荒なメーカーでした。
ちなみに、致命的なバグを抱えたまま出荷や、パッチ供給の不手際の謝罪を意を込めて、登録ユーザー限定に「いただきじゃんがりあん ちょこっとあどべんちゃ~」というタイピングゲームを無償配布されました。
552事件
2001年に2チャンネルにとある掲示板のログがアップロードされます。
通称「552文書」と呼ばれるテキストファイルで、アダルトメーカーで有名なLeafの社内で使われている掲示板のログがアップロードされてしまった事件になります。
2月14日に起こった出来事なので、2・14事件とも呼ばれるようになったこの事件ですが、スタッフの「愚痴」「愚痴」「愚痴」が多数あったため、当時大変話題となりました。
ブラック感が伝わってきますね・・・
みずいろHDD初期化事件
2001年4月13日ねこねこソフトから発売された「みずいろ」は、ゲームをアンインストールする際、インストールしたディレクトリによってはハードディスクが初期化されてしまうという、深刻なバグがありました。
メーカーから修正差分は提供されたものの、知らずにDドライブ直下にインストールしようものならDドライブが全て消去されてしまうという恐ろしいバグです・・・
ちなみに「みずいろ」より知名度は劣りますが、翌年2002年10月OUT GROWより発売された格闘シューティングゲーム「ASSAULT ARMOROID Angelio 完全版」でも同様の深刻なバグがありました。
リバ原あき事件
2005年8月、アイル所属のディレクター・原画家のリバ原あき(川原亮俊氏)がファイル共有ソフトのWinnyを使用した際、暴露ウイルス「Antinny」に感染してしまい、次回作の企画書や、ゲームやアニメをWinnyで違法ダウンロードした痕跡や、2チャンネルへの書き込み履歴など多くのプライベート情報が流出してしまいました。
(特に書き込みは自社や同僚や取引先などを、痛烈に批判した書き込みが散見されました・・・)
その他第三者を装って宣伝行為をするステルスマーケティングや、自身の作品に出演した女性声優の表名義を故意に暴露した内容などが残されておりました。
後に同社で謝罪しつつ、雑誌のコラムでも謝罪文を掲載し、2007年に復帰しましたが、他にもアイルでは「脅迫名称使用事件」や「回収事件」様々な事件がありました。
おたく☆まっしぐら地雷事件
2006年9月に銀時計から発売された「おたく☆まっしぐら」では、シナリオの途中で突然エンディングに飛んでしまう等の深刻なバグが相次ぎ、パッチで一部の問題は修正されるも、未だにイベントが発生しない、使用されないCGが存在したり、突然声無しになるなどの多くの問題が未解決のままです。
如何でしたでしょうか。
今回は全盛期(2000~2006年)について記事にさせて頂きました。
ややネガティブな話題てんこ盛りになってしまいましたが、この時期が一番バブルだったかと思います。
本当はこの時期に発売した作品として、月姫、鬼作、はじめてのおるすばん、DC~ダ・カーポ~、沙耶の唄、その花びらにくちづけをとかも紹介したかったのですが、記事のボリューム的に厳しかったです・・・
(月姫とかは同人にも関わらずクオリティが高かったので紹介したかったですが・・・)
そういえばこの時期からアダルトゲームには吉里吉里が使われ始めるようになったかと思います。
俗に言う紙芝居ゲームは、このソフトで格段に開発速度は上がったのではないかと思います。
次回予告
スマートフォンの普及に伴い売上の伸び悩みと、ストーリーにシフトしたことによる様々な競合が発生したことによる、アダルトゲーム業界の危機の衰退期について記事にしようと思います。
・全盛期(2000~2006年)
ご清覧ありがとうございました。
度重なる延期を繰り返されて、「そして伝説へ・・・」と評される程で、謎の人気から「Galge.comアワード2009」では、発売された8千件のアダルトゲームから1位を選ぶ総選挙でぶっちぎり1位を取ったという逸話があります。
>おそらくコピペミスだと思いますが「いただきじゃんがりあん ちょこっとあどべんちゃ~」です。また、「いただきじゃんがりあん」ではない画像を引用して並べるのは誤解を招くかと。