ゲーム情報
タイトル: ふゆから、くるる。
ブランド:シルキーズプラス
ジャンル:学園SFミステリーADV
発売日:2021年9月24日(金)発売
価格:10,780円(スペシャリテ版 12,430円)
原画:あめとゆき氏 / なのはなこひな氏
シナリオ:渡辺僚一氏
主題歌/ED曲:逢瀬アキラ氏
ストーリーのおさらい
発売前に公開されていたストーリー
本作品は独特の世界観があり、ゲームには女子しか登場しておらず、また世界は学園のみの生活となります。
天才と認められると卒業して外の世界に出られるのですが、認められないと年齢が18歳になると若返っていき、赤ん坊になるまで幼くなると、再び大人になるというサイクルを繰り返していくというもの。
本作ではカーネーションシステムと呼ばれておりますが、脳さえ無事なら例え死んだとしても何度でもやり直しすることが出来るため、登場するキャラクターの死生観は少し常識と異なる一面があります。
ある日、主人公の「空丘 夕陽」のパートナーである「霜雪 しほん」が殺されてしまいます。
しかも殺され方が「頭部が無い」状態であるため、二日以内に頭部を見つけないとカーネーションシステムが使えず「本当の意味での死」であるため、探偵を始めるという物語です。
初期の人間関係図
空丘と霜雪はお互いパートナーであり、お互い超ラブラブな関係で、霜雪が死ぬ直前に空丘に探偵をやって欲しいとお願いします。
水名は月角島に陵辱されたこともありかなり嫌悪している状態で、空丘と霜雪とは仲の良い友人なので霜雪が殺された後に空丘の探偵の助手として手伝うこととなります。
月角島は不思議な雰囲気のあるお姉様系で、霜雪が殺される前日に同じく首を切断されて死亡します。
宇賀島ユカリは殺人鬼で、宇賀島ベルリンは救護班という相反する関係にあり、ユカリは自身の判断基準(黒い針に興味を持つ生徒)に基づいて殺し、ベルリンは死んでしまった生徒をいち早く見つけて蘇生させる役割になります。
星都は学園の生徒会長で幼児体型がかなりのコンプレックスで、金髪幼女あるあるなツンデレ体質なのですが、2つの殺人事件で空丘の探偵活動を許可します。
塔子は星都と仲が良く副会長的な立場で星都のサポートを行うのですが、成り行きで空丘の探偵活動を手伝うのですが、無意識に会話で他人をコントロールするので振り回されることもしばしばあります。
澱はおどおどとした小動物的な生徒なのですが、空丘のことが好きすぎてストーカーし、場合によっては殺しも致し方ないと考える中々ぶっ飛んだ性格であったり、殺人鬼の宇賀島ユカリに対して強気な行動を取れる数少ない人間ですね。
世界観のまとめ(おさらい)
最終的に判明した世界観は宇宙空間に漂う船(宇宙船)を舞台としたSF物語になります。
人類が生存可能となる星を求め宇宙をひたすらに突き進む物語で、当人達(一部除く)は一切その事実を知らず、学園内でただ生活するものです。
黒い針の正体とは
黒い針の正体は本作品に登場する女の子たち自身となり、同時に宇宙を航行している船になります。
つまり少女たちは共通の幻想空間で生活しており、現実では黒い針が集団となり宇宙を航行しております。
実際のサイズもペンぐらいのサイズで、ナノテクノロジーの技術で女子1人分の脳情報が入っているのです。
卒業とは
度々登場する「卒業」とは外の世界に行くのではなく実は「死」であるものです。
宇宙空間では危険な高エネルギー電磁波(X線やγ線)の影響を受けると故障してしまうことがあるのですが、その際に現実が幻想に侵入することで、宇宙空間を垣間見るようになるのです。
そのため、卒業が近い生徒は黒い針(自分自身でもある)に興味を持ち、宇宙に興味を示すようになるわけです。
物語を鍵となる「島」について
本作では初期では「宇賀島ユカリ」「宇賀島ベルリン」「月角島ヴィカ」の3人の名字に「島」が付くキャラクターが存在します。
物語の後半では既に亡くなってしまった「蔦凪島」が登場し、「空丘」も終盤「空丘島」となります。
この「島」の名が付く少女こそが、本来の目的を最初から知っている人物となります。
しかしながら、それが本当であるかどうか分からず、一般船の証言ベースだけでは確実ではないと判断し、「島」の名字を持つ者同士で、「もし故障が手遅れになった時に状況を説明をしてもらう」ための実験を行い、その時に犠牲になったのが「蔦凪島」です。
序盤のしほんの注射とは
序盤でしほんが夕陽に対して「注射」を行っていましたが、これが何の注射であったかは謎でした。
しかし、しほんの研究の一部の「男」を作るための薬だったのですね。
しほんは「もし自分が新しい意識を作るなら夕陽が良い」と言う考えのもと、夕陽を男にしようとしていたのですね。
当初、夕陽のクリトリスが突起してペニスのようになるのは、カーネーションを何度も繰り返すことによる遺伝的なバグと説明されていましたが、しほんが「男」を作ろうとしていた計画を夕陽は最初から知っていたのですね。
(この描写があったため、序盤で結末を予想できませんでした
月角島ヴィカと宇賀島ユカリの葛藤
本来は二人とも「男」を作ることには賛成でした。
何故なら、このままいくと生徒(船)が皆全滅する未来が見えていたからです。
似たような個性は偶然良い環境に居れば効率的に生き残ることが出来ますが、様々な環境に適用するためには「多様性」が必要不可欠となります。
そのため、「新しい意識」を作るため、「男」を作り、交配して多様性を増やすのですが、船の数は限られているため、その器となるために自身が犠牲となり「新しい意識」の受け皿となることとなるのです。
「男」の暴力性に不安視していたヴィカは今回の探偵じみた実験を行います。
恐らくきっかけは、物語中に少しだけ登場した「植台地」の存在かと思います。
男となりレイプ魔になってしまった「植台地」の姿を見て、秩序を乱すものとしてユカリに殺されますが、ヴィカは「植台地」を危険視して「卒業」させた経緯があるからです。
実験終盤ではある程度「夕陽」を認めていましたが、結果として「夕陽」に対して恐怖を覚え、「男」の存在に対して否定的になります。
一方ユカリは群れを絶滅させるわけにはいかないと考え、生殖することで種の存続を強く望みます。
死生観の違い
恐らく多くのプレイヤーが登場するキャラクターの死生観の違いについて違和感を覚えたかと思います。
それは「死」に対する恐怖が一般人の感覚と異なる点です。
それもそのはずです。
カーネーションシステムがあるため、18歳まで成長すると、再び若返っていき、赤ん坊になると再び成長するというサイクルが存在します。
仮に死んだとしても「脳」が無事であれば、予備体に移し替えることで再びカーネーションシステムに入ることが出来ます。
更に「殺人鬼」の存在が認められています。
ヴィカやユカリが「新しい意識」を作る際に懸念していたのが、「本当の死」に直面した場合、どれだけ現場がパニックになるのか検証しておきたかったのはそのためですね。
声優陣の演技について
今回比較的優秀な声優で固められておりましたが、やはり特筆すべきは空丘夕陽役を演じた月野きいろ氏と、月角島ヴィカ役を演じた水野七海氏は素晴らしかったと思います。
夕陽は序盤はちょっとおとぼけ感を演出するために可愛らしいリアクションとかがとても可愛かったです。
しかし、終盤に向けて怒りを覚えると「男」の本能が出て、クールに威圧する声色に変化していく様はとても素晴らしかったです。
更に現実を突きつけられて、怒りと混乱が入り混じっていく時の演技も素晴らしかったので、恐らくはディレクターの事細かな指示が行き届いていたのでは無いかと思います。
ヴィカ役の水野七海氏も冷静なお姉様役を演じながらも、徐々に狂っていく夕陽に恐怖で怯え始める演技はよく出来ていたと思います。
あと相変わらず水名とりねこ役を演じた上原あおい氏は可愛らしい声でしたねぇ…
熾火澱役の花澤さくら氏は引退前の貴重な作品になっていますが、これまた非常に可愛い声で満足させられました。
「新しい意識」を作り出した後の世界
「新しい意識」では新たな名前になっていましたね。
終末期には変な語尾(最後に「ん」が付く)が文化として定着していましたね。
空丘夕陽 → 空丘島朝日 → 空丘島光
霜雪しほん → 霜雪れぷと → 霜雪すふれ
宇賀島 ユカリ → 宇賀島 ゆゆゆ
キャラクターのイメージ感の変化
空丘 夕陽
一番変化したのは夕陽ではないでしょうか。
元々はエッチでのほほんとした性格でしたが、しほんちゃんが亡くなってから悲しみに打ちひしがれ、しかししほんちゃんを救うため「笑顔」を作り出して探偵になりました。
その後、真相が分かるに連れて、怒りから暴力的な性格になったり、しほんちゃんが完全に消滅してからはしほんちゃんが救えなかった代わりに、誰かを救わずにはいられないサイコパスに変貌していきましたね。
「新しい意識」では、またエッチでのほほんとした性格に戻ってましたね。
霜雪 しほん
一番変化が無かったかと思います。
終始ゆーちゃん(夕陽)の事が心から愛しており、最初から「新しい意識」を作るならゆーちゃんと決めているぐらいの愛しっぷり。
「新しい意識」でもやっぱりゆーちゃんが大好き。
水名 とりねこ
ヴィカに陵辱されるわ、ユカリに殺されるわで終盤まで散々な思いでしたが、故障寸前から救うための手段と知ってからは、闇雲に二人を嫌う場面は無くなりましたね。
とは言え、やはりヴィカに対しては嫌悪感を示していましたが、水名は好きな人と結ばれるより、実は嫌いな人と結ばれるような変わった性癖がありましたね。
宇賀島 ユカリ
無慈悲に人を殺す殺人鬼で最初の印象は「怖い」とか「クール」という印象が強かったですが、誰よりも優しい心の持ち主で、一生懸命周りの少女を救おうとしていたのですね。
テンパると「うにゃ!」とか可愛い声を出す所は、ギャップがあって良いですよね。
宇賀島 ベルリン
本来はユカリ同様、駆逐船(デストロイヤー)なので殺人鬼の役目を担うのですが、その役目をユカリに託し、自身は救護班という形で死んだ少女をカーネーションシステムへ連れて行く役目を担っていましたね。
クールではあるものの、やはりメンタルはやや弱い面が水名とのやり取りで垣間見えましたね。
星都 チエミ
こちらも終始特に変化は無かったかと思います。
極度のツンデレ、金髪幼女と言うテンプレキャラはブレなかったのは良かったと思います。
菊間 塔子
こちらも終始特に変化が無いキャラクターですね。
常にチエミラブは徹底しており、それは「新しい意識」以降も変わらずな感じでしたね。
熾火 澱
当初は夕陽の男の匂いに欲情し、簡単に人を殺しかねないサイコパスな感じでしたが、駆逐戦(デストロイヤー)になれる資質があったようですね。
故障仕掛けていた水名に影響されてそれが開花し、後々ユカリに教育される中でユカリに惹かれていくようになりましたね。
月角島 ヴィカ
当初は知的なお姉さん風で、相手の感情をコントロールするのに長けていましたが、夕陽の「男」としての検証を通じて夕陽に恐怖を抱き、終盤自暴自棄とも思える行動を取るようになりましたね。
雲母舞歌
冒頭で速攻でユカリに殺されたため、終盤再登場した際は誰だったっけ?となった人も居るのではないでしょうか。
この子は無事、「新しい意識」で復活?し、ユカリの「新しい意識」であるゆゆゆと牧草地で再会を果たしましたね。
12の謎の答え合わせ
なぜ少女達は不死なの?
そもそも死の定義が定まっていないですが、カーネーションシステムで成長と幼化を繰り返すようプログラムされているので、理論上不死ではあるが、X線やγ線で針が損傷し、修復不可能になれば存在が消えるため、厳密には不死ではない。
どうして成長したり幼化したりするの?
不老不死の世界だと人間関係が閉じてしまうため、新たな関係構築のためのカーネーションシステムで幼化させているのかと思いますが、「新しい意識」ではやはり相性には抗えず、同じ人とパートナーになる傾向があります。
学園に閉じ込められてどのくらいの時間が経過したの?
途方も無い時間だと思います。
人類が観測できる最も古い(距離)は400億光年と言われていますが、そもそも目的地の距離も針の移動速度も不明なので、この解はゲームをプレイしても判明しないものですね。
どうして首を切断されても生き返ることができるの?
予備体と呼ばれている肉体が用意されているからです。
しかし、この予備体は実は限りがあり、今ある針を使うしか無いため、壊れた針で使える部品を繋ぎ合わせて幾つか増やすことが出来る模様。
そういった限られた資源(針)を有効活用するために、ヴィカは陵辱と言う手段で精神的なショックで初期化に近い状態にし、症状を改善させるという手段を取っていわけですね。
天才になれなかった少女はどうなるの?
そもそも「天才」になって「卒業」した少女はおらず、「消滅=死」と言う恐怖をカモフラージュさせるため、「天才」と表現し、皆のモチベーションを上げていたわけです。
そのため「天才=卒業=死」にならず、目的地に辿り着くことが本来の使命になります。
外の世界はどうなっているの?
星が瞬かない宇宙のどこか。
少女しかいない理由は?
たまたまそういう集団の群れだった。
男はどこにいるの?
別の針の群れではいるかもしれない。
もしくは少女たちをプログラムした地球の人類が生きていれば存在している。
死ぬって何?
針が高エネルギー電磁波(X線やγ線)の影響を受けると故障してしまうこと。
宇宙線に起因する半導体の誤動作をソフトエラーと呼ばれているが、中性子が、電子機器の半導体に衝突すると、保存されたデータが書き換わり、故障の原因となります。
生きるって何?
本作では後述でも示す「使命」のためでしょうか。
命ってなに?
針が稼働していること。
なんのために、命、ってあるの?
地球外の人間の移住可能な惑星を探し、その場所で人類を反映させるという使命を全うするためにある。
名字に「島」が含まれている人は、その使命を唯一知る者。
まとめ
なんだかまとまりのないレビュー記事となってしまいましたね…
(申し訳ない
プレイしてみて、よくシナリオが練られているなぁと言った印象でした。
序盤は突拍子もなく場面が切り替わるので、どういった話の流れか掴めずに混乱するところもありましたが、サクサク読んでいけるシナリオではないかと思います。
気になった点と言えば空丘夕陽のその後でした。
一番救われなかった所もあり、「新しい意識」では幸せかと思いますが、その後空丘夕陽は幸せになれたのか?はたまた幸せになれずとも納得いく想いに至れたのか?その後と結末の描写が無いため、ここだけはモヤモヤが残った印象でした。
ここはFD等で後日談みたいなのがあると良いかなと思いました。
良かった点で言うと、まずは声優陣の演技力も良く、ディレクターの指導もよく行き届いている印象でした。
イベント絵も多く、よく描き込まれていて綺麗なグラフィックに仕上がっていると思います。
「新しい意識を作る」=「自身の死」に対して戸惑いつつも、最終的に受け入れて種の存続を選んだのは考えさせられましたね。
果たして今の人類がそういう選択を出来るものなのか・・・?
分岐がほぼ皆無だったのでこれならラノベでも良いのではと思う人もいると思いますが、最近の美少女ゲームの傾向から考えると致し方ないかなと思いました。
如何でしたでしょうか。
あまりこういった文章を書くのが得意ではないので、思ったことをツラツラと書いて少し読みづらかったと思いますが、どうかご了承ください。
結局黒い針以外の針がなんだったのかは私はよく分からなかったです。
(もしかして冒頭の12の謎の?)
もし分かる人がいたら教えて下さい。
ご清覧ありがとうございました。