時代の変化
この時期からはじりじりと時代が変化していきました。
全盛期にFateが大人気を博してから、多くのメーカーが追従する形でゲームの方向性がストーリー性にシフトしていきました。
しかし、考えてみてください。
この時期はラノベが既に先行してブームになっている時期でした。
ラノベと言えば90年代に「スレイヤーズ」、2000年初頭には「灼眼のシャナ」や「涼宮ハルヒ」が人気を博し、2004年からライトノベルのブームが始まりました。
そしてこのアダルトゲーム衰退期に流行っていたラノベと言えば、「俺の妹がこんな可愛いわけがない」、「僕は友達が少ない」、「ソードアート・オンライン」、「ノーゲーム・ノーライフ」と強豪揃いです。
8000円出してアダルトゲームを購入するよりも、600円のラノベの方が圧倒的にコスパが良いわけです。
作家の質もラノベはある程度揉まれた中で勝ち抜いてきた猛者である一方、アダルトゲームはここ数年でストーリー性にシフトしたわけなので、やはり作家のレベルとしてはまだまだ到達していない時期でした。
競合相手になってしまいコスパ的にも苦しい展開になり、この時期はキラータイトルも非常に減っていたと思います。
市場・ユーザー層の変化
2008年になるとスマートフォンが登場します。
更に2010年になるとWindowsだけでなく、MACやスマートフォンに対応したブラウザ型の18禁ゲームが登場し始めます。
Androidでも18禁のアプリが登場し、ゲームプラットフォームとしてDMM、にじよめ、TSUTAYAオンラインゲームなど次々と開始されます。
かつては二次元でハーレムイチャイチャコンテンツはパソコンだけだったのが、様々なプラットフォームで解決するようになりました。
スマートフォンの登場でかつては1人1台パソコンの時代から、徐々にパソコンを持たない世代も増えてきました。
そして全盛期でも語りましたが不正コピーは相変わらず続いている状態でかつ、2000年初頭にマジコン世代で遊んでいた子どもたちが成人する時期で、ゲーム自体にお金を出さない感覚のユーザー(むしろユーザーですらない)層が増えてきました。
そして90年代後半から支えてきた既存のユーザー層の世代は、この時期から徐々に結婚などのライフスタイルの変化で卒業していく人も出てきます。
このようにパソコンを持たない、タダでゲームをする感覚、既存ユーザーの卒業、競合プラットフォーム増加など多くの要因が重なりアダルトゲーム業界はかなり苦しい展開になっていきます。
数値の変化
下図はアダルトゲームの販売本数になりますが、2006年~2007年に掛けてはFateの影響もあり下がり始めてた本数が一度上昇傾向になりますが、2008年を境に下がり続けています。
アダルトゲームの市場規模に関しては2002年の560億をピークに、徐々に下降し続け2013年には188億にまで下がっております。
65%も下落しているのが分かります。
その他アダルトゲームの売上高も2011年から2016年に掛けて毎年20%前後ずつ下落していきました。
しかし、一方で2013年からじわりじわりとダウンロード販売の方は伸び始めていきます。
ブランドの縮小
このような市場の縮小、ユーザー層、プラットフォームの変化に揉まれ、この時期は数々のメーカーが倒産していきます。
この頃は体力のないブランドや、お家騒動的な形での解散が多かったと思います。
RUNE
2008年には女装少年が登場する事で有名なRUNEが、原画家退職に伴いブランドが消滅しました。
BasiL
2009年には「それ散る」で有名なBasiLが、内部の揉め事で所属スタッフ全員解雇となり、事実上倒産しました。
この時解雇になったスタッフは後にNavelを立ち上げ、こちらは順調に行っているので、やはり経営者の問題でしょうか・・・
Silver Bullet
2013年には「雪影-setsuei-」という作品を出していたSilver Bulletが外注費未払い、かつ連絡なしとうりりさんがツイートがきっかけで、経営が本気でヤバそうな話が浮上しましたよね。
後にホームページも閲覧できなくなり、事実上崩壊しました。
エルフ、シルキーズスタッフ
2014年にはエルフ、シルキーズスタッフが独立してシルキーズプラスを設立するなど、元々入れ替わりの激しかったエルフですが、人材流出に歯止めが効かなくなり、後に公式サイトも閉鎖されましたよね。
同級生3はもう幻となってしまいましたね。
(あのおデブヒロインをどう活躍させるつもりだったんだろう・・・)
この時期に起こった事件
「まじかる☆プリンス」騒動詳細
後にも先にもこの「まじかる☆プリンス」回収騒動が規模的には大きかったのでは無いでしょうか?
こちらは誤って開発環境のデータをプレスしてしまうというとんでもないミスが発覚し、不良ディスクを交換した事件ですね。
約一か月後に配布された修正版でも「CGモード」や「Replay」が使える状態にならないという不具合が起きていました。
炎上もとい火事になったCIRCUS火災事件
2009年にD.C. 〜ダ・カーポ〜で有名なCIRCUSが漏電?の可能性が原因で火事となりました。
幸いスタッフに怪我や健康被害が無かったのは不幸中の幸いでしたが、大変でしたね・・・
声優にスポットが当たり始める
ちょっと暗い話ばかりだとあれなので、明るい話としてはこの時期から美少女ゲームの声優にスポットが当たるようになってきました。
この時期活躍した声優さんは多くいらっしゃるため、若干個人的な好みになりそうですが、2008年げっちゅ屋のランキングで例をあげるなら、White部門Black部門ダブル受賞した風音さん、出演数トップを誇るかわしまりのさん、表でも同じ名義で活躍する青葉りんごさん、ハイテンションな佐本二厘さん、今でもYoutuberとして活躍するあじ秋刀魚(通称あじ子さん)とかでしょうか。
「side White」:
萌え系、キャラクター重視、純愛モノ、ラブコメ、などの要素を含む作品を対象としています。
「side Black」:
エロエロ、凌辱系、猟奇的ストーリー、などの要素を含む作品を対象としています。
その他に活躍されていたのは秋野花さん、小倉結衣さん、くすはらゆいさん、北見六花さん、桐谷華さん、五行なずなさん、民安ともえさん、遥そらさん辺りでしょうか。(衰退期の境目であれば歩サラさんも)
桐谷華さんは2010年代中期は美少女ゲーム声優の女王に君臨し、後に遥そらさんや小鳥居夕花さんと共に3大美少女ゲーム声優と(筆者に)呼ばれるようになりましたね。
また珍しい声優として中家志穂さんと水純なな歩さんはリアルで双子と言うことでちょっと注目されましたよね。
あと、グラビアアイドルから転身された早瀬弥生さんもいらっしゃいますね。
げっちゅ屋の声優コラムでは藤崎ウサさんが2015年から連載するようになりましたね。
藤崎ウサさんの逸話として、ウサさんが出演OKになったからおもらしシーンを追加しました!っていう出来事があったのは面白かったですね。
ニコニコ動画で顔出ししている声優さんが沢山居て、様々な逸話を語りたいですが、話が長くなりそうなので、いずれ声優さんの歴史について別途記事にしようかと思います。
【番外編】ASMRといった音声作品が登場し始める
ASMRはいつか別途歴史について記事にしようかと思いますが、2013年頃から徐々に音声作品が登場し始めます。
先駆けは何と言っても伊ケ崎綾香さんではないでしょうか。
バイノーラル音声を使った活動を2012年から始めておりました。
とみみさんが2014年頃からニコニコ動画を通じて登場しはじめます。
恐らく日本でブームになってきたのは2014年~2015年頃でしょうか。
ニコニコ動画で爆発的に耳かきボイスが伸び始めました。
ぬきたしのCVをしている沢野ぽぷらさんも音声作品で有名な方でしたよね。
この当時注目されたアダルトゲーム
あかね色に染まる坂
2007年に発売した「あかね色に染まる坂」は当時絶好調のfengから発売されていました。
(後に倒産しちゃうけど・・・)
(※写真はPSP版)
アニメ化やコンシューマーの移植されたり、キャラクターデザインを担当した和泉つばすさんは今や人気トップクラスですよね。
E×E
2007年に発売のゆずソフト第二弾「E×E」
きちんと調べたわけでは無いのですが、今でこそ一般的となったカウントダウンムービーの先駆けはこの作品からでは無いでしょうか?
作品の宣伝や発売日を忘れられないようにという事で、様々なネタを盛り込んだ動画が2チャンネルやニコニコ動画を介して広まりました。
前作のヒロインを登場させたり、当時としては革新的だったと思います。
リトルバスターズ
元々は全年齢版の恋愛アドベンチャーゲームとして2007年に発売された「リトルバスターズ」
後にエロゲ化したという珍しい逆パターンですよね。
その後、コンシューマーにも移植され、アニメかもされ、今でも続編が出続けている
DRACU-RIOT!
「まさにエロナ!」で話題になりましたよね。
この頃からゆずソフトは徐々に知名度を上げて言った気がしています。
大図書館の羊飼い
2013年に「図書館の羊飼い」がオーガストから発売されます。
アニメ化されたり、オーガストと言えばこの作品を思い浮かぶ人も多いのでは無いでしょうか。
月に寄りそう乙女の作法シリーズ
「つり乙」の略称で慕われるNavelより2012年に発売された「月に寄りそう乙女の作法」
綺麗なグラフィックが特徴で、シナリオを含む全体的な総合点としても非常に高い作品です。
ヒロインの「桜小路 ルナ」はルナ様とファンからは呼ばれ、Twitterでもアイコンにしている人が沢山いますよね。(私のフォロワーさんにもいらっしゃいます)
本作品の続編に当たる「月に寄りそう乙女の作法2」では2014年げっちゅ屋ランキング総合でも1位を取るほどの人気を誇っていました。
サノバウィッチ
「オナ地さん」「ぽんぴぁ!」「もうやだ泣きたいお家帰るぅ」など数々の名迷言を残したこの作品、げっちゅ屋のランキングでも総合1位、グラフィック1位、ムービー1位、シナリオ5位、ミュージック10位、キャラクター1位、4位、13位を掻っ攫う無双っぷりです。
(すみません、こちら若干筆者の好みで紹介しちゃいました。)
「ヨスガノソラ」や「ましろ色」が無いじゃないか!とか「フォーチュン」や「バルドスカイ」が無いとかありえないよ!とか「DC」や「まじこい」が無いとはにわかだなとか、「グリザイアの果実」や「はつゆきさくら」も取り上げてよ!って声が聞こえてきそうですが、記事の都合上ご勘弁ください・・・
如何でしたでしょうか。
今回は衰退期(2007~2015年)について記事にさせて頂きました。
この辺りだと割と記憶にある方もいらっしゃるのでは無いでしょうか。
様々な変化が生じた時期でもあるので、もっと違った視点でこの時期を捉えていた方もいるかもしれません。
まぁあくまでも一個人としての感性だと思って頂ければ幸いです。
本当はもう少し売上とか数値の資料を紹介しようかと思ったのですが、出展元が曖昧だったので敢えて触れませんでした。
次回予告
さて、いよいよ次は最終回になります。
予めお話しておくと、次は「歴史」ではなく、今の傾向についてお話しできたら良いなと思っております。
ご清覧ありがとうございました。